意味がなければスイングはない / 村上春樹

Posted on 2009年03月18日 | コメント (0) | トラックバック (0)

村上春樹が苦手である。もしその理由を訊かれたら必ず答えるけれど、とにかく、村上春樹は苦手だが、最近この本を読んだ。文庫版が出たのは昨年 12 月。「さよならバードランド」が面白かったのと、ご本人がかなり根性を入れて書いたとのことで購入した。

最初の章で取上げられているのがシダー・ウォルトン。ずいぶんとマイナーなところから始めるなと思いながら読んでみたが、すべてを読む前にまた本棚に戻してしまった。しかし、それからしばらくしてウディ・ガスリーのディスクを聴いたりした経験を踏み、この本でウディ・ガスリーのことが書いてあったことを思い出し、再度手にとって、その章から読み始めたら面白かった。無理して読む本では無いが、何かもったいない気がして最初から丁寧に読もうと思っていたのだけれど、そうしなくても良いということに気がつく。

取上げられているミュージシャンについては、ジャズ・ミュージシャンもいるけど、クラシック、ロック、フォークのミュージシャンもいる。全体のバランスは良いように思う。
いずれにしろ、興味がある章ごとに読んでみたら、ウィントン・マルサリスの章で本格的に面白いなと感じた。演奏する人ではないのにミュージシャンの内側の欲求について言及する表現があり、よく分かっていると感心した (村上春樹がジャズ喫茶経営者だったことは知っていたけれど、普通そこまで感じるリスナーに会ったことが無い。ほら某有○ジャ○喫○オー○○の評○って凄いけどボロボロじゃん)。
ストレートに言うと「なんでそんなことまでわかるの?」と思った。

自分の周りはジャズと絡んでいる人がほとんどなので、お薦めの章を挙げるとするとスタン・ゲッツの章はかなり面白い。スタン・ゲッツが不良ミュージシャンなのは有名だけれど、相当ヤバイということが強烈にわかる。
でも同時に、ゲッツがハードブロウ・テナーであり、他のレスター・ヤング・フォロワーのミュージシャンに厳しい理由もわかる。デクスター・ゴードンの「俺は "ジャズ" という言葉が好きだ。もちろん、そうやって名前を付けられることを嫌がる奴がいるのも知ってるよ。でも、俺の人生そのものなんだよ、、、ジャズはね。」という言葉を思い出す。

もし、自分がよく知っているミュージシャンの章を読んだ際、その章についてちょっと難しいなと感じたら、そのミュージシャンについて聴きこみが足りないと反省した方がいい。それぐらい発見がある評論だった。

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