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千歳烏山「RAGTIME」にて (2009/01/23)

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ヴィブラフォンがベンドする(Arise, Her Eyes/Steve Swallow)

2012/10/28 15:58

チック・コリアとゲイリー・バートンのデュエットはジャズでも屈指のコンビで、ビル・エヴァンスとジム・ホールとのコンビに匹敵する、いや個人的には前者の方がすごいんじゃないかと考えているのだが、このコンビでの最初にリリースされたアルバムが「クリスタル・サイレンス」といって、昔からずっと好きなアルバムである。
アルバムについてはさておき、このディスクの二曲目のアライズ・ハー・アイズ(Arise, Her Eyes)という曲がとても好きで、いつかやってみたいなと考えつつも、避けていた。採譜するのも大変そうだし、やる時のイメージがつかめなかったからだ。

この曲にはずっと前から気になっていることがあった。テーマをゲイリー・バートンが取るのだけれど、最初から二つ目の音がベンドしているように聴こえるのである。ヴィブラフォンにしてもピアノにしても、楽器の構造上、ベンドは出来ないけれども、ゲイリー・バートンは大変な名手だし、ヴィブラフォンについては半ペダルができるので、この曲の演奏を聴いていて、実は出来るんじゃないかとずっと思っていた。

ところが、ある夜、酔っ払ってベッドにもぐり込み、手近にあったiPhoneで "Arise, Her Eyes" + "score" みたいなキーワードで検索してみたら、サクッと楽譜が見つかってしまった。しかも watt の公式サイトである。watt はカーラ・ブレイの私設音楽家団体で、この曲の作曲者であるスティーブ・スワロウはカーラの恋人だから、誰かのトランスクリプションじゃない、本人による楽譜であると考えられる。
(因みに watt のサイトでは多数の楽曲が公開されているので、とてもありがたい。)

翌朝、早速弾いてみた。そしたらまったくあのサウンドが出てびっくり。ヴィブラフォンがベンドできるっていうのも全くの思い込みで、ピアノでも同じようなサウンドが出るのだと初めて知った。
どういう音使いをしているのかというと、それほど難いことではなかった。CM7 に Bb のノートがあるメロディを乗せているだけだった。
しかし、CM7 に Bb をポーンと置くだけでは、ベンドしたようなサウンドは出ないと思う。これは CM7 だからこそだと思った。M7 コードは調性が色濃く出るから、そこにあっと驚く Bb があるので、こういうサウンドになるのだろう。
また、メロディにも特徴があって、Bb の直前は7度上のAとなっており、上からこういう下がり方をしておきながら、Bb というノートが来ているので、ベンド感が出るのだと思った。この曲ではこういう音型があちこちに出てくるので、その面白さを狙ったのではないかと思う。
他にも、コード進行に「Idim→I」というのが多数表れていて、縮→拡が曲を特徴付けている。驚きの連続だった。ユニークなアメリカ人が考えることって本当にすごい。

なお、Arise, Her Eyes について他にも演奏されたものが無いか調べてみたが、スティーブ・スワロウ本人の演奏は見つからず、先のチック・コリア/ゲイリー・バートンのデュエットと、ゲイリー・バートンのソロのブートレグしか見つからなかった。よって、自分のバンドでやったら、世界初のバンド演奏とうそぶくつもりである。



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